第37話 ほほえみのゆくえ

ぼくのズボンのアップリケ。

くまがほほえむアップリケ。

ぼくのだいじなアップリケ。

 


おとこのこなのに、5つになるのに、ヘンでしょ。

ひざこぞうに、くまのアップリケなんて。

でも、みんなにもあるでしょ?

どうしてもすてられないものだったり、なぜかだいじにしまってあったり。

おとうさんなんか、ぼくがかいたおかあさんのかお、ずっとだいじにかざっているんだ。

はずかしくてこまっちゃうよ。

 

 

 

ようちえんのかえりみち、いやなやつにあったんだ。

すこしからだがおおきいからって、みんなのまえでえらそうにするいやなやつ。

とおりすぎようとしたら、そいつ、ぼくのせなかをおしたんだ。

ぼく、ころんじゃった。

ひざのアップリケ、よごれちゃったよ。

ぼくくやしくて、そいつにむかっていったんだ。

そしたら、またやられちゃった。

さっきよりもつよくころんじゃった。

ひざからちがみえて、こわくなっちゃった。

でも、そのいやなやつもこわくなっちゃったのかな、うわっていってにげちゃった。

でも、ぼく、なかなかった。

ひざはいたいけれど、つよくなるってやくそくしたから。

 

 

 

いえについたら、おとうさんがしんぱいしてくれた。

ぼくなら、だいじょうぶなのに。

でも、ひざをみたら、きずぐちがみえたんだ。

いつもなら、くまがわらっているはずのひざこぞうから。

ぼくのズボンのアップリケ、どこかにきえちゃったんだ。

おかあさんがつけてくれた、おもいでのアップリケだったのに。

かなしいかな、くやしいかな、なんだろうな。

わからないけれど、ぼく、ないちゃった。

おかあさんと、やくそくしたのに。

なかないって、やくそくしたのに。

アップリケのようにわらうって、やくそくしたのに。

おかあさんがしんじゃってから、はじめてないちゃった。

おとうさん、ごめんなさい。

おかあさんとのやくそく、やぶっちゃった。

そういったら、おとうさん、ぼくをだきしめた。

おとうさん、わらいながら、ないてた。

へんなの。

でも、なんだか、ぼくももっとなきたくなってきちゃった。

おかあさん、ごめんなさい。

きょうだけは、なきむしのおとうさんとぼくを、ゆるしてね。

おかあさん、ごめんなさい。

だいじなだいじなアップリケ、どこかとおくへきえちゃった。

 

 

 

みんなにもあるでしょ?

なくなってしまうと、とてもかなしいきもちになるもの。

でも、だいじなのはかたちじゃないんだって、ぼく、そうおもうんだ。

ぼくがわらったら、おとうさんもわらいかえしてくれた。

ないてわらったおとうさんのかお、なんだかくまのアップリケみたい。

 

 

ぼくのだいじなアップリケ。

くまがほほえむアップリケ。

ぼくのこころにアップリケ。

 

 

 

 

 

以上、第37回マッソー斎藤の今夜もプロテインでした。

次回、カピバラって、、、なんかいいよね(未定)

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