ぼくのズボンのアップリケ。
くまがほほえむアップリケ。
ぼくのだいじなアップリケ。
おとこのこなのに、5つになるのに、ヘンでしょ。
ひざこぞうに、くまのアップリケなんて。
でも、みんなにもあるでしょ?
どうしてもすてられないものだったり、なぜかだいじにしまってあったり。
おとうさんなんか、ぼくがかいたおかあさんのかお、ずっとだいじにかざっているんだ。
はずかしくてこまっちゃうよ。
ようちえんのかえりみち、いやなやつにあったんだ。
すこしからだがおおきいからって、みんなのまえでえらそうにするいやなやつ。
とおりすぎようとしたら、そいつ、ぼくのせなかをおしたんだ。
ぼく、ころんじゃった。
ひざのアップリケ、よごれちゃったよ。
ぼくくやしくて、そいつにむかっていったんだ。
そしたら、またやられちゃった。
さっきよりもつよくころんじゃった。
ひざからちがみえて、こわくなっちゃった。
でも、そのいやなやつもこわくなっちゃったのかな、うわっていってにげちゃった。
でも、ぼく、なかなかった。
ひざはいたいけれど、つよくなるってやくそくしたから。
いえについたら、おとうさんがしんぱいしてくれた。
ぼくなら、だいじょうぶなのに。
でも、ひざをみたら、きずぐちがみえたんだ。
いつもなら、くまがわらっているはずのひざこぞうから。
ぼくのズボンのアップリケ、どこかにきえちゃったんだ。
おかあさんがつけてくれた、おもいでのアップリケだったのに。
かなしいかな、くやしいかな、なんだろうな。
わからないけれど、ぼく、ないちゃった。
おかあさんと、やくそくしたのに。
なかないって、やくそくしたのに。
アップリケのようにわらうって、やくそくしたのに。
おかあさんがしんじゃってから、はじめてないちゃった。
おとうさん、ごめんなさい。
おかあさんとのやくそく、やぶっちゃった。
そういったら、おとうさん、ぼくをだきしめた。
おとうさん、わらいながら、ないてた。
へんなの。
でも、なんだか、ぼくももっとなきたくなってきちゃった。
おかあさん、ごめんなさい。
きょうだけは、なきむしのおとうさんとぼくを、ゆるしてね。
おかあさん、ごめんなさい。
だいじなだいじなアップリケ、どこかとおくへきえちゃった。
みんなにもあるでしょ?
なくなってしまうと、とてもかなしいきもちになるもの。
でも、だいじなのはかたちじゃないんだって、ぼく、そうおもうんだ。
ぼくがわらったら、おとうさんもわらいかえしてくれた。
ないてわらったおとうさんのかお、なんだかくまのアップリケみたい。
ぼくのだいじなアップリケ。
くまがほほえむアップリケ。
ぼくのこころにアップリケ。
以上、第37回マッソー斎藤の今夜もプロテインでした。
次回、カピバラって、、、なんかいいよね(未定)