昨夜、年甲斐もなく、積木をしてみた。
全て同一の大きさの円柱型の積木が、計20個。
マッソーはまず、10個の円柱で以って、
下から4、3、2、1と積み上げ、一つの大きな三角形を作ってみた。
それはまるでお城のようでもあり、理想的なボディ(逆三角形)でもあった。
なんだか女子トイレの看板のようにも見えてきて、
顔を作ってあげようと躍起になって、
三角形の頂点に2個、1個の順に円柱を積み上げてみて、
そしてすぐに崩れてしまった。
なんだか、ニヒルな笑みがこぼれ、そして蚊の羽音のような声が出た。
どうして私は、このような年齢にもなって、積木などをしているのだろうと、
自分を笑った。
ここで、ある少年の話をしたいと思う。
家族3人で、珍しくも旅行した時のこと。
小田原の大雄山であったか、どこか外の山であったかは、定かではないのだが、
家族でお泊り旅行なんて滅多になかった少年の心は、
あまりの喜びに蚊が高く飛ぶよりも舞い上がっていたのだ。
旅館に行く前に山の神社に参拝に行こう、という流れで、
山の麓に辿り着くと、300段はあるであろう階段を目の前にして、
父と母は少年にこう言い放ったのだ。
「1人で行って来い」
熊は出ないにしても、蛇が出るかも知れない。
知らないおじさんに連れていかれることも、
階段から足を滑らせてしまうことだって、あるかも知れない。
決して過保護に育った訳ではないと自負してはいる。
今の時代で考えれば、少し可哀そうにも思えてくるが、
当時のその浮かれポンチの少年は、むしろ勢いを増して、
1段飛ばしで300段の階段を駆け上がっていったのだ。
少年は、そう、馬鹿だった。
参拝の意味など知らない少年は、賽銭箱に小銭などは入れず、
ただガラガラだけをして、すぐに上った階段を駆け下りた。
少年は麓に着くと、ベンチに座った2人の背中を見つけて、
シメシメ、こいつは驚かせてやるチャンスだ、とソロリと近づいた。
1歩、2歩、その距離は迫る。
ここだっ! というタイミング。
「お父さんっ!」
少年はスキンヘッドの男性の背中に飛びついたのだ。
その瞬間、少年の頭に疑問が過った。
匂いが、違う。
父がこのような良い匂い(香水)がするはずがなかったのである。
振り返る男性、その隣に座る女性。
スキンヘッドにジャージといういでたちの香水漂う男性と、
蜜柑の皮が腐り始めたという色の髪のワンレンの女性が、少年を見つめていた。
今思えば、そのスジの人に違いないのではと思わせる風貌の男性に、
無邪気に飛びつく少年。
少年とスキンヘッド男とワンレン女の顔が作るトライアングルの刹那の3秒。
そのトライアングルに慌てふためいて近づいてくる、新たなスキンヘッド。
そう、少年の父もまさかの、スキンヘッドなのである。
少年の父もさぞびっくりしたことであろう、
自分の息子が知らないスジものだと思われる、
自分と同じスキンヘッドの男性に後ろから抱きついていたのだから。
そこに新たな三角形が生まれた。
スキンヘッド、スキンヘッド、坊主。
それらをつなぎ合わせることで作り出される星座のような見事な逆三角形。
人里離れた山の麓に、見事な逆三角形ボディが浮かび上がったのだ。
ドスでも出されようものなら命は覚悟しなければならない、
少年の父はそう思ったのかも知れない。
少年の父はその頭を蒸気させながら、すいません、すいません、
と頭を下げる父の姿を見て、少年は涼しげに、母親向かってにこう言った。
「茹で蛸みたいだね★」
当然のことなのかも知れない。
少年は、自分の勘違いにより、スキンヘッド、坊主、スキンヘッド、
という非現実的な偶像をその目に焼き付けたのだ。
振り上げられた父の拳は、少年の頭に落雷のように落ちた。
少年はこう思ったのだ。
僕は勘違いしたかも知れないけれど、でも、面白かったからいいじゃん、と。
マッソーの昔話?
いや、とある少年の話。
勘違い、それに気づいた瞬間は確かに、焦燥し、自分の行動を悔やむのかも知れない。
だけど、本当にそれだけなのだろうか。
少しだけ視点を変えれば、勘違いが起こした非日常は、
楽しむべきドリームなのではないだろうか。
スキンヘッド、坊主、スキンヘッド、が織りなす夢の大三角形なのではないか。
だからマッソーは勘違いをしても、悔やむことは(なるべく)せず、
プラスに変える努力をしているのだ。
トイレットペーパー12ロールを買っていたことを忘れ、
さらにトイレットペーパー12ロールを買い足したマッソーは、
持ち腐れにならぬよう、積木などをしてみせるのだ。
もちろんそこには、ニヒルな笑いが添えながら、
スキンヘッド、坊主、スキンヘッドに思いを馳せているのだ。
以上、第4回マッソー斎藤の今夜もプロテインでした。
次回、プロテイン中学VSプロテイン老人ホーム!(未定)