昔々あるところに、鬼が住む山がありました。
ある日のこと、山のふもとにある村の一人が、山から鬼が下りてくるのを見つけると、
「鬼が出たぞー、鬼が出たぞー」
と、村中に知らせました。
すると村の男たちが、色々なものを持って村の入り口に集まりました。
泥の玉、石、薪。
鬼が村に近づいてくると、村の男たちは一斉に持ってきたものを投げつけました。
バンッ、ドンッ、パンッ。
鬼はいても立ってもいられず、そそくさと山へ帰っていきました。
またある日のこと、鬼はきのこをたくさん乗せたざるを抱えながら、山から下りてきました。
それを村人の一人が見つけると、
「鬼がでたぞー、鬼がでたぞー」
と、村中に知らせました。
するの村の女たちが、色々な食べものを持って村の入り口に集まりました。
米、餅、野菜。
どれも村で作った新鮮なもので、鬼の大好きなものでした。
パクッ、ムシャ、ゴクン。
鬼は食べものを平らげると、急にお腹を押さえて苦しみ始めました。
食べものには、村の女たちが作ったお腹を下す薬が塗ってあったのです。
鬼はきのこを乗せたざるを地面に置くと、泣きながら山へ帰っていきました。
「このままでは鬼が何してくるかわからない」
村人たちは口を揃えて言いました。
「よし、次に鬼が山から下りてくる前に、万全の準備をしておこう」
そしてまたある日のこと、鬼はリンゴが実った大きな木を一本肩に担いで、山から下りてきました。
それを村人の一人が見つけると、
「鬼がいらっしゃったぞー、鬼がいらっしゃったぞー」
と、村中に知らせました。
すると村中の人が村の入り口に集まり、いらっしゃいませ、いらっしゃいませ、と笑顔で鬼を迎えました。
鬼が村の中央に置かれた大きな椅子に座った、その時でした。
ドスン。
大きな音を立てて、鬼は村人の前から消えてしまいました。
鬼は村人たちが作った、大きな大きな落とし穴に落ちてしまったのです。
鬼は持ってきたリンゴの木を使って、落とし穴から出ようと試みました。
「そうはさせるか」
村人たちは鬼が落ちた穴の中に、石やら泥やら、牛や馬の糞やらを一斉に投げ込みました。
そして、鬼が出てこないように落とし穴に丸太でふたをして、大きな石を乗せると、落とし穴の中を川の水で一杯にしました。
ブク、ブク、ブク。
鬼は息ができなくなってしまい、とうとう死んでしまいました。
それからというもの、鬼は山から下りてこなくなりました。
村人たちは、いつ、また、別の鬼が山から下りてきても良いよう、毎日包丁を研ぎながら、平和に暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし
俺が勝手に作ったお伽噺を聞いた五歳になる息子が言った。
「なんだか、村の人が鬼みたいだね」
胸が少し熱くなった。
以上、第28回マッソー斎藤の今夜もプロテインでした。
次回、クッキーが好きです! 野爆の。(未定)